首相の「アサヒノマスク」発言が物議 2枚3300円の製造元、調べてみると…
新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて、政府が全世帯に2枚ずつ配る布マスク。安倍晋三首相が主導し、国民の人気はいまいちで「アベノマスク」ともやゆされている。記者会見で配布に疑問を呈した朝日新聞の記者に対し、首相が「御社も2枚3300円で販売していた」と“反撃”したことが物議を醸している。
「御社のネットでも布マスク、3300円で販売しておられたということを承知しておりますが、つまりそのような需要も十分にある中において、我々もこの2枚の配付をさせていただいた」
「緊急事態宣言」の全国拡大などを巡って開かれた17日の首相記者会見。「最近では布マスクや星野源さんの動画でも批判を浴びているが、この間の一連の新型コロナの対応について、ご自身でどのように評価しているか」と質問した朝日新聞記者に対し、首相は語気を強めて“反撃”した。
事前に保守系の経済評論家が「朝日新聞が2枚で3300円のぼったくりマスクを販売中! 買っちゃダメだよ!」とツイートしていた影響もあってか、ネット上には「朝日新聞に特大ブーメラン直撃! ぼったくりかよ」「朝日新聞社は国民のことを何も考えていないぼったくり悪徳商法会社だった」などのツイートが相次いだ。
元々定価、「繊維の街」が手作り
しかし、実はこのマスク、2枚3300円が定価だ。「繊維の街」として知られる大阪府泉大津市の南出賢一市長と泉大津商工会議所がマスク不足の解消を目指し、3月6日に市内の繊維メーカーに呼びかけて、市内と近隣の計6社(後に7社)がそれぞれに手作りで製造・販売したうちの一つだった。市や商議所のホームページには「必要な人にマスクが届かない状況を改善するため、泉大津ならではの良さが詰まったマスクを揃(そろ)えました」「地元事業者が一つひとつ手作りでつくりました。“泉大津産マスク”は洗ってもまた使えるマスクで、経済的、環境にも優しいマスクです」とある。
朝日新聞の通販サイトで販売していたマスクを製造したのは、1917年創業の泉大津市の老舗繊維メーカー「大津毛織」。同社によると、マスクは計4層構造。綿は医療用レベルの原料を使うなどし、150回洗濯しても使えるという。1日1000~1500セットを社員約15人で手作りしているという。
ぼったくりと言われ「すごく残念で悲しい」大津毛織のマスク担当者は「布製でありながら、立体構造で長時間着けていても不快感がない」と胸を張る。だが、首相の発言によって、ネットの一部では「ぼったくり」などと表現されて攻撃対象に。担当者は「すごく残念で悲しい。言われっぱなしで我々にはどうしようもなく、対抗策もない。日々マスクを作って届けるしかない」と声を落とした。
ただ、ネット上ではそうした事実を踏まえた投稿も増え始めている。妊婦向けマスクの袋に虫が混入するなど約1900枚の不良品が見つかり、「サイズが小さく、重い」などと批判される「アベノマスク」と比較し、「アベちゃんも注目、アサヒノマスク! アベノマスクより高品質らしいし」といったツイートも。「どこがぼったくりや? プロの作ったもん、バカにすんな。仕事潰すな!」「安倍政権が打ち出した地方創生をも否定する話」などの指摘も上がっている。
ネット上ではさらに、朝日新聞の通販サイトが首相の指摘を受けて閉鎖したとの誤った情報まで広がった。朝日新聞社によると、受注を停止したのは、首相が東京都などに緊急事態宣言を翌日に出すと「予告」した4月6日。通販サイトでは日付は入っていないものの「新型コロナウイルス感染拡大で政府が緊急事態宣言を出しました。これに伴い、朝日新聞SHOPは、物流に支障が出る恐れがあることから、お客様からの受注を、期間未定で停止いたします」と記載しており、確認をしないまま情報が広がっているようだ。
首相は、17日の記者会見では「ウイルスとの闘いを乗り切るためには何よりも国民との一体感が大切だ」と述べ、収入が減った世帯への30万円給付から1人当たり一律10万円給付へと方針転換したことに関し「混乱を招き心からおわびを申し上げたい」と陳謝するなど、いつになく低姿勢で国民の協力を求めた。
しかし、その同じ会見で、自らの政策に疑問を呈した特定の新聞社を「攻撃」し、結果的に一体感とは正反対の「分断」を招いている。
スポンサーリンク
以下ネットの反応。
アベノマスク騒動で、首相が朝日新聞の記者に対し「御社も2枚3300円で販売していた」と“反撃”。しかし一回の洗濯で縮むアベノとは違い「アサヒノマスク」は高品質。150回洗濯可能で長時間快適 。
なぜ、一国の首相から一メーカーが攻撃対象にされねばならないのか。 https://t.co/m0fVPy7x74— 清水 潔 (@NOSUKE0607) April 20, 2020
「朝日新聞憎し」で地域に根付いたメーカーのマスクを叩いてしまった安倍さん。取り返しのつかないことをしてくれました。 pic.twitter.com/gJFLqYJyGe
— Tad (@TadTwi2011) April 18, 2020
「マスク不足解消の一助にしたい」と繊維のまちの力を結集して作られたマスクです。在庫ご確認の上、是非お買い求めください。3300円のマスクもございます。
大阪)「繊維のまち」の力結集、マスクを販売 泉大津:朝日新聞デジタル https://t.co/H1yYcCMx5M
— 朝日新聞那覇総局 (@asahi_okinawa) April 18, 2020
朝日新聞SHOPが売っていたマスク
・泉大津市の地場産業が技術の粋を集めて製造
・鼻も顎も完全カバー
・150回洗える4層構造で医療現場の使用にも耐えうる
・双方合意の上で売買アベノマスク
・製造元不明
・鼻や顎が出てしまう
・耐久性不明
・勝手に税金使って勝手に送られてくる— 異邦人 (@Narodovlastiye) April 18, 2020
朝日新聞の通販サイトで販売のマスクは1917年創業の「大津毛織」の製造です。マスクは計4層構造。綿は医療用レベルの原料を使い150回洗濯しても使用可能。社員約15人で手作りしています。2枚3300円が定価。首相の発言で攻撃対象になり担当者は「すごく残念で悲しい」と。https://t.co/8j0zXbdCyu
— 小川一 (@pinpinkiri) April 20, 2020
右:政府が466億円かけて配布する #アベノマスク
左:記者会見で新型コロナ対応への自己評価を問われた安倍首相が皮肉のつもりで言及した朝日新聞SHOP販売の布マスク。繊維の町の手作り。
「3300円」と価格まで諳んじていたが、危機の宰相が把握すべきことは他にあるのでは。感覚のズレに震える。 pic.twitter.com/tMFWtSqcLM
— 南 彰 / MINAMI Akira (@MINAMIAKIRA55) April 18, 2020
「朝日新聞を叩きたい」―ただそれだけの目的のために、大正創業の老舗が作ったハンドメイドの高機能マスクを揶揄、批判、中傷した連中に保守を名乗る資格はない。乗っかった安倍総理も含めて。 pic.twitter.com/lNM7ykmU4s
— や ん ば る ぐ ら し (@yanbarugurashi) April 18, 2020
毎日新聞、しっかり調べてます。 https://t.co/HBgajQQw0Y
— 宮本徹 (@miyamototooru) April 21, 2020
毎日新聞◆首相の「アサヒノマスク」批判が物議 2枚3300円の製造元、調べてみると… https://t.co/yPaOxpAbgd 「担当者は「すごく残念で悲しい。言われっぱなしで我々にはどうしようもなく、対抗策もない。日々マスクを作って届けるしかない」と声を落とした」※日本の首相が国内メーカーを中傷。
— deepthroat (@gloomynews) April 20, 2020