前回のフレイザーのインタビューでも見られましたが、トランプの勝利を、ネオリベラリズムで被害を被ったひとびとに支持された結果と解釈しています。そしてその勝利は「進歩的ネオリベラリズム」の敗北でもあると。進歩的ネオリベラリズムとは、グローバルな金融資本主義と「多様性」や「エンパワメント」といった言葉を唱えるエリートたちの結合、を意味しています。本来「多様性」や「反差別」といった言葉は、全ての人々のための理想でしたが、現在ネオリベラリズムに利用されて、能力主義や企業中心主義のための言葉になってしまっているとフレイザーは考えています。これはフレイザーが従来から批判しているフェミニズムの変質と深く関わっている重要な論点です。
トランプの支持者たちは、文化的には「多様性」を唱える教養あるエリートたちから差別され、経済的にもグローバル化で大きな打撃を受けました。本来ならそこで左翼が彼女・彼らの痛みを引き受けるべきなのですが、現代アメリカでは左翼が不在なため、トランプの反動的・差別的な政治にすくわれてしまった、ということです。
しかしもちろんトランプはひとびとの真の救済となるはずはないので、フレイザーは、とくにクリントンを支持したひとびとに、間違いを認めトランプ支持層に訴えかける努力をすべきだ、と論じています。
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以下ネットの反応。
なぜヒラリーでいいのかが理解できなかった、ポリティカルコレクトネスを奉じて反トランプに必死な「リベラル」の正体が、彼女のこの一文を読んでやっと見えて来た(苦笑)。★フレイザーのトランプ論「進歩的ネオリベラリズムの終焉」https://t.co/9Vz6vifCbT
— 日本国黄帝 (@nihon_koutei) 2017年1月30日
https://t.co/A2KTZ2oeNg 「本当の左派の不在」と言う言葉が正しいかどうかはわからない。ただ「ネオリベにNOをつきつける際の選択肢が左派ではなく極右にすべて持っていかれている」という欧米の失敗を、日本は決して繰り返すべきではない。
— 鐘の音(政治社会) (@kanenooto8459) 2017年1月30日
ナンシー・フレイザーは、やっぱりまともだと感じますね。https://t.co/AwLkKKFQbu
— Fujiko99.9 (@fujiko99_9) 2017年1月31日
フレイザーのトランプ論「進歩的ネオリベラリズムの終焉」https://t.co/7tuvspSIp1
おもしろかった。日本の言論界にはこういうことを言っている人があまりいないような。。— パンス (@panparth) 2017年1月30日
むしろリベラルでななく左翼の存在が必要だと。新しいニューレフトって面白いな。原文でも build a new new left って書いてあるのか。 / “フレイザーのトランプ論「進歩的ネオリベラリズムの終焉」 : おきく's第…” https://t.co/QBAIeZoky1
— (Ǝ)ɐsıɥıɥso⅄ ouɐɓnS (@koshian) 2017年1月30日
https://t.co/zuH7v1kANk
フレイザーのトランプ論、おもしろい。おおむね同感。
「彼に投票した人々が拒否したのは[…]、「進歩的な」ネオリベラリズムだった。これは矛盾しているように聞こえるかもしれないが、[…]ねじれているが現実に起きている政治的連合」— yama moto (@_3___0) 2017年1月29日
つづき)この連合において、進歩的勢力は、とくに金融化の認知資本主義の力と効果的に連結した」。
政治学者、ナンシー・フレイザーの分析ですって。◆「進歩的ネオリベラリズムの終焉」 https://t.co/OrVOLrPD9g
アメリカ人は馬鹿ではない。日本の左派よりは。
— Ken (@Ken_November) 2017年1月29日
なかなか興味深い「トランプ論」ですね。
あとは、今後数十年は揺れることさえないと思われた「グローバルな金融資本主義」の担い手である、莫大な資本(お金)を持ってる(グローバル大企業)と強大な権力を持ってる(マスメディア)と既存の政治家(オバマ・ヒラリー)勢力に痛烈な一撃が加えられたという部分もポイントだと思います。
だって、「グローバル化は世界がフラットになるまで止まらない」というのが定説でしたからね。まあ、結果として止まらないかも知れませんが、正義面して世界中を食い荒らす「グローバルな金融資本主義」勢力に一撃が加わった意味は大きいと思います。
今後は2か国間の貿易になるので、国のトップの資質が大きく影響してくるんでんでんすね。「グローバルな金融資本主義」勢力にベッタリだった日本は大丈夫でしょうかぁ。
「トランプの反動的・差別的な政治」
そして、差別的な部分だけにスポットを当てるのではなく、何に対する反動でトランプが選ばれたのかをしっかり理解しなければなりません。