宿主がわかっていないため治療方法も感染防止方法もわからないとされてきたMERSですが、ここへきてドイツの研究班から「MERSワクチンでマウスの予防に成功」という報告が出されました。まだ、人への臨床試験はこれからなので過剰な期待は禁物ですが、各国で感染が広まっており対処法がない現状においては間違いなく明るいニュースと言えるでしょう。
http://medley.life/news/item/556fd437e54bec2901546544
中東から感染が広がった中東呼吸器症候群(MERS)のニュースが相次いでいます。感染した人の行動をコントロールするのは難しく、韓国では対策に苦しんでいるようです。現時点でMERSの治療は対症療法にとどまりますが、ドイツの研究班によってワクチンが開発され、マウスの感染を予防できたことが報告されました。
研究班は、MERSの病原体であるMERSコロナウイルスに含まれる物質のうち、感染した動物の体内で免疫システムに発見され、抗体を作らせる性質(免疫原性)のある物質を特定しました。その「スパイク糖タンパク」と呼ばれる物質を遺伝子組み換え技術によって必要量だけ合成し、ワクチンとして、マウスの実験で効果を試しました。
研究班は、ワクチンを筋肉注射または皮下注射によってマウスに与えました。するとすべてのマウスで、白血球の中にMERSコロナウイルスを選んで攻撃する細胞が現れ、またMERSコロナウイルスを攻撃する抗体が作られました。
次に、ワクチンを接種したマウスがMERSコロナウイルスに感染しにくくなっているかを確かめる実験が行われました。MERSコロナウイルスは普通のマウスには感染しにくいと考えられますが、マウスの遺伝子組み換えによって、人間由来の「ジペプチジルペプチダーゼ4受容体」という物質を作らせることで、人間と近い程度に感染するようになると考えられます。こうして用意したマウスにワクチンを接種したうえ、MERSコロナウイルスに触れさせたところ、感染を抑える効果が認められました。
今回のワクチンの作り方は、遺伝子組み換え技術を使った方法なので、もしかしたらより強力なウイルスを作り出してしまうかも知れません。それでも、たとえ危険があるとしても、原因不明でどうしようもないこんな状況でこそ遺伝子組み換えの技術を使う価値があるかと思います。